#3 花粉とかけて、春の夜の夢と解く、その心は・・〜専門医が解説する花粉症と果物の意外な関係〜

その心は、どちらも涙を誘う時節で1)

まだ小寒い日もありますが、だんだん日が伸びて春めいてきましたね。春といえば桜ですが、その前に多くの方を悩ませるのがスギ花粉です。
今年は例年に増して花粉が多く、涙が止まらないという患者さんも少なくありません。

満開の桜に感動して流す涙もあれば、飛散ピークの花粉にやられて流す涙もあります。
今回は花粉症に関連したテーマをお届けしようと思います。

1) 風通ふ寝覚めの袖の花の香にかをる枕の春の夜の夢(新古今和歌集)

花粉症とは、花粉に対する過剰な免疫反応(アレルギー)である

花粉症が何かということをおさらいしましょう。花粉症は、花粉に対してアレルギーが起きてしまうことで、鼻水、鼻づまり、目の痒み、涙などの症状が出ます。アレルギーとは、食べ物や花粉、家の中のホコリなど本来危険でないものに対して過剰な免疫反応が起きることを言います。日常でも、物理にアレルギーがある(強い苦手意識がある)という風に使われますね。

治療は抗ヒスタミン薬が基本で、そこにロイコトリエン拮抗薬や点鼻ステロイドを組み合わせていきます。なお、当院では、花粉症に用いるお薬は、後発品であっても先発品と同一の製剤であるオーソライズドジェネリック(AG)を採用しており、品質面にもこだわっています。
花粉症の治療は症状が出る前から内服することで症状の改善効果が高まることが知られているため、バレンタインデーを目安に内服を始めると快適な春を過ごせます。

花粉症に関連して、特殊な食物アレルギーが起こることがある

近年、花粉-食物アレルギー症候群(PFAS)が注目されています。
PFASは、花粉症に関連して起こる特殊な食物アレルギーです。例えばハンノキやシラカンバに対する花粉症がある患者さんが、リンゴ、モモ、サクランボなどの果物を食べると、免疫が果物を花粉と勘違いしてしまい、口の中のピリピリ、喉のイガイガなどの症状を引き起こすことがあります。

診断を難しくしているのは、生の果物や果汁100%ジュースを食べると症状が出ますが、加熱調理されていたり缶詰などの加工品では症状が出ないという点です。
これは原因となるタンパク質が熱に弱いため起きる現象で、純粋な食物アレルギーとは異なるため、完全に回避する必要はないことも多いです。

生の果物・大量の花粉・誘発因子に気をつけ

PFASはほとんど軽症ですが、条件が重なると重症化する場合があります。重症化しやすい条件として、次のようなものがあります。
食べた果物が生であること、大量の花粉に浴びていること、誘発因子(食後の運動、飲酒、痛み止め内服、月経、感染、ストレス、旅行、風呂など)が関わることです。

普段はちょっと口の中がピリピリ、喉がイガイガするくらいで問題なく果物食べられるよ、という方も、花粉が多い時期は果物を生で食べたり、誘発因子を避けるなど注意が必要です。

まとめ:花粉症は、花粉だけでなく、果物にもアレルギーを起こすことがある

・花粉症があり、生の果物を食べると口がピリピリしたり、喉がイガイガしたりした場合、PFASの可能性がある

・花粉がピークの時期は、生の果物や誘発因子を避けることで重症化を防ぐことができる

春の夜は、袖を濡らすことなく、心地よく過ごしたいものです。

この記事の執筆者・監修者

上井 康寛(かみい やすひろ) 逆井記念医院 院長

【資格】

  • 医学博士(東京慈恵会医科大学)
  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
  • 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
  • 日本感染症学会 感染症専門医

東京慈恵会医科大学を卒業後、呼吸器内科に入局。慈恵医大附属病院や国立病院機構東京病院などで長年研鑽を積んで参りました。
当院では、呼吸器、アレルギー、感染症をはじめとする幅広い内科疾患に対して専門的知見に基づいた診療を行っています。
このブログでは、診察室では時間が限られているためお話ししきれない病気や治療の大切なポイントを、できるだけ分かりやすくお伝えして参ります。

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