#4 肺炎球菌ワクチンのススメ〜専門医が解説する最新の肺炎球菌ワクチン〜
令和8年4月から公費接種の肺炎球菌ワクチンが進化しました
肺炎は日本人における死因の第5位であり、その主要な原因菌が肺炎球菌です。これまでも肺炎球菌ワクチンの公費負担による定期接種が行われてきましたが、今月から定期接種で用いられるワクチンが進化しました。そこで今回は、肺炎球菌ワクチンについての最新事情について解説します。
なぜ、肺炎球菌ワクチンを接種する必要があるのか?
肺炎球菌は肺炎の原因菌として最も頻度が高く、肺炎以外にも中耳炎や副鼻腔炎などの原因となります。さらに進行すると、菌血症や髄膜炎といった侵襲性肺炎球菌感染症を引き起こし、小児や高齢者を中心に命に関わることもあります。こうした肺炎球菌感染症を予防するために、日本では肺炎球菌ワクチンの定期接種が行われています。
肺炎球菌と一言でいっても、実は約100種類近くのタイプに分類されます。たとえて言えば、日本人であっても47都道府県ごとに特徴が異なるようなものです。これまで使用されてきたのは、以下の2つです。
・23種類をカバーする23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)
・13種類をカバーする肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)
一見すると、より多くのタイプをカバーするPPSV23の方が優れているように見えますが、実際にはPPSV23はPCV13に比べて免疫を誘導する力が弱く、感染予防や重症化予防の効果が限定的であるという欠点がありました。
肺炎球菌ワクチンの定期接種は平成26年に導入され、一定の効果を上げてきましたが、ワクチンに含まれないタイプによる感染症には効果が及ばないという課題が残っていました。
こうした背景の中で、より多くのタイプをカバーしつつ、しっかりとした免疫を誘導する結合型ワクチンとして、PCV20が令和6年に登場し、今回の公費接種ワクチンに採用されました。
最新の肺炎球菌ワクチンはどこが進化したのか?
公費接種は非常に有用な制度ですが、基礎疾患のない方では65歳の年に1回のみ接種できます。そのため、
・65歳の年に接種を受けなかった方
・以前にPPSV23を接種し、追加接種を検討している方
にとっては、全額自己負担にはなりますが、より新しいワクチンを選択するという考え方もあります。
現在の最新ワクチンは令和7年に登場したPCV21です。数だけみるとPCV20より1種類多いだけですが、単純に種類を増やしただけでなく、カバーする種類の構成が見直され、現在の流行状況に合わせて最適化されたワクチンとなっています。
今後も新しい肺炎球菌ワクチンが登場する可能性は十分にあります。スマートフォンと同様に、より新しいものを待つという考え方もあれば、現時点で最も有効と考えられるワクチンで感染症リスクを下げるという考え方もありますね。
肺炎球菌ワクチンは今後どのように進化していくのか?
カバーするタイプを増やしていくことがワクチン開発の王道ではありますが、構造上、単純に増やしていくことには限界があります。そこで近年は、肺炎球菌の表層タンパク質や自然リンパ球に着目した新しいワクチン開発が進められています。
私自身も大学院博士課程において微力ながらその研究に携わっており、こうした基礎研究の成果が実際の臨床に還元される日を迎えられることを願っています。
まとめ
肺炎球菌ワクチンは感染を完全に防ぐものではありませんが、重症化を防ぐことに大きな意義があります。
PCV20やPCV21の登場により、肺炎球菌感染症をより効果的に予防できる時代になりました。
ご自身やご家族を守るためにも、肺炎球菌ワクチンについて気になる方は、お気軽にご相談ください。
この記事の執筆者・監修者

上井 康寛(かみい やすひろ) 逆井記念医院 院長
【資格】
- 医学博士(東京慈恵会医科大学)
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
- 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
- 日本感染症学会 感染症専門医
東京慈恵会医科大学を卒業後、呼吸器内科に入局。慈恵医大附属病院や国立病院機構東京病院などで長年研鑽を積んで参りました。
当院では、呼吸器、アレルギー、感染症をはじめとする幅広い内科疾患に対して専門的知見に基づいた診療を行っています。
このブログでは、診察室では時間が限られているためお話ししきれない病気や治療の大切なポイントを、できるだけ分かりやすくお伝えして参ります。