「治ったと思って吸入をやめたら危険?」〜医師が解説する喘息治療の要点〜

はじめに

「症状がなくなったので、吸入はもうやめてもいいですか?」

外来で非常によく受ける質問です。実際、喘息として吸入治療を開始すると、2週間ほどで症状が良くなることが多く、「もう治った」と感じて治療をやめてしまう方も少なくありません。

しかし、喘息は症状がなくなっても治ったわけではなく、治療をやめてしまうと発作が再び起きてしまう可能性があります。発作を何度も繰り返すと、肺機能が低下して酸素吸入が必要になることや、命に関わることもあります。

今回は、なぜ喘息の治療には時間がかかるのかを解説します。

喘息の本質は、気道の慢性炎症

喘息とは、空気の通り道である気道に慢性的な炎症が起きている病気です。小火(ぼや)がくすぶり続けている状態をイメージしていただくと分かりやすいでしょう。

このような状況では、ホコリ、気圧の変化、ストレスなど様々な刺激がトリガーとなって小火が一気に燃え広がり、大火となります。

この大火が起きた状態が喘息発作で、ゼーゼーと息苦しくて横になれない、咳が止まらず眠れないという症状が起こります。

吸入ステロイドは、気道の慢性炎症を抑える

喘息発作が起きた場合は全身ステロイドにより速やかに鎮火されますが、炎症が完全に消えたわけではなく、小火がくすぶっている状態です。

発作が再度起きないようにするには、吸入ステロイドで地道に気道の炎症を抑える消火活動を行うことが大切ですが、気道の炎症が長く続いているほど、火消しをするのに時間がかかります。

通常は3〜6か月ごとに治療の見直しを行いますので、最短でも3か月は治療が必要となります。1年間発作が出ない状態を維持できれば、目標を達成したといえます。

吸入ステロイドは、生活の質と命を守る

治療を自分の判断でやめてしまうと、ただ発作を繰り返すだけで済むのでしょうか。「発作が出たときだけ治療すればいいや」と考える方もいるかもしれません。

しかし残念ながら、発作を何度も繰り返すと、気道を取り巻く筋肉が徐々に厚くなり、治療に反応しにくくなります。そうなってくると気道が狭くなって肺機能が低下し酸素吸入が必要になることや命に関わることもあります。

現在でも年間約1000人が喘息により命を落としており、喘息は決して軽視できる病気ではありません。吸入ステロイドによる治療を継続することは、生活の質と命を守ることにつながります。

喘息とショコラの甘い関係

ショコラに含まれるカフェインやテオブロミンには、気管支をわずかに広げる作用が知られています。しかし、治療効果が得られるほどの量をショコラから摂取することは現実的ではありません。むしろ生活習慣病のリスクにつながるため、喘息があるからといって食べ過ぎるのは禁物です。

まとめ:喘息の治療は自分でやめないことが重要

・吸入ステロイドは、気道の慢性炎症を抑え、喘息発作を効果的に予防する

・炎症を時間をかけて火消ししていくことが、生活の質と命を守ることにつながる

喘息の症状が落ち着いている時期こそ、将来の発作を防ぐための大切な治療期間です。「急がば回れ」の気持ちで、じっくりと治療を続けていきましょう。

この記事の執筆者・監修者

上井 康寛(かみい やすひろ) 逆井記念医院 院長

【資格】

  • 医学博士(東京慈恵会医科大学)
  • 日本内科学会 総合内科専門医
  • 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
  • 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
  • 日本感染症学会 感染症専門医

東京慈恵会医科大学を卒業後、呼吸器内科に入局。慈恵医大附属病院や国立病院機構東京病院などで長年研鑽を積んで参りました。
当院では、呼吸器、アレルギー、感染症など、幅広い内科疾患に対して専門的知見に基づいた診療を行っています。
このブログでは、診察室では時間が限られているためお話ししきれない病気や治療の大切なポイントを、できるだけ分かりやすくお伝えして参ります。

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