#6. 6月に結婚する花嫁は幸せになれる。6月に健診する患者さんは?〜専門医が解説する生活習慣病のいろは〜
幸せになれるのは花嫁だけ?
2026年も早いもので6月になりました。6月といえば、「ジューンブライド」です。
「ジューンブライド」とは、古くからヨーロッパで「6月に結婚する花嫁は幸せになれる」とされる言い伝えです。
一方で、私たち医療機関にとって6月は特定健診や企業健診が本格的に始まる健康診断シーズンの始まりでもあります。
「6月に健康診断を受ける患者さんは健康になれる」という言い伝えこそありませんが、健康診断は病気の早期発見につながる大切な機会です。
「血圧が高いと言われました」
「血糖値が高めでした」
「コレステロールが引っかかりました」
という相談が増え、最後に決まって聞かれるのが、下記の質問です。
「症状はないし、まだ薬を飲まなくても大丈夫ですよね?」
「薬って、一回飲み始めたら一生飲まないといけないのですよね?」
音なき警報
高血圧、糖尿病、脂質異常症を三大生活習慣病といいますが、これらの病気は症状がないまま進行することが特徴です。
加齢、体質、生活習慣の乱れ、肥満、睡眠不足などが重なり、血圧・血糖・悪玉コレステロールが高い状態が続くと、血管に少しずつ負担が蓄積し、最終的に脳卒中や心筋梗塞など重大な病気のリスクが高まります。
脳卒中や心筋梗塞は突然起こるように見えますが、その前から体は静かに変化しています。しかし、その変化が警報音として現れることはほとんどありません。
数値がかなり悪化しても自覚症状が乏しいことが多く、「症状がないから受診しなくて大丈夫」と思われがちですが、場合によっては命に関わることもあり、後遺症によって介護が必要になることもあります。
お薬を減らせる・止められる患者さんも
では、一度薬を始めたら本当に一生飲み続けなければならないのでしょうか?
そうとは限りません。これらの病気は生活習慣の要素と体質の要素の両方があります。
肥満の改善、生活習慣の改善、禁煙、睡眠の質を上げる、飲酒を減らすなどによって、血圧や血糖、悪玉コレステロールが改善し、薬を減量・中止できる場合も実際にあります。一方で、体質の要素が強い場合は、生活習慣を改善しても十分に数値が下がらず、薬を継続する必要があることも多いです。
「薬をなるべく飲みたくない」というのは、多くの患者さんが抱く率直な気持ちだと思います。
だからこそ当院では、最小限の薬で最大限の効果を得られるような処方を行っています。
また、最近は合剤も増えてきましたので、やむなく薬剤を継続するときは、なるべく飲む薬の数を減らし、治療を続けやすい処方を心がけております。
めざすべき減塩食とは
高血圧では塩分の摂りすぎが大きな問題になります。高血圧のある方では、食塩摂取量6g/日未満が目標とされています。
日本人の平均は約10g/日前後とされており、いきなり6g/日未満が厳しい患者さんにはまず8g/日未満を目指すように指導しております。
また、野菜や果物に含まれるカリウムには余分な塩分の排泄を助ける働きがあり、バランスの良い食事が大切です。
最近は血液・尿検査から塩分摂取量や野菜摂取量を推定できるため、当院でも定期検査の際に取り入れております。
できるだけカロリーを見直す
糖尿病では、まず摂取カロリーの見直しが重要になります。体重管理は血糖値改善に直結するため、食事内容だけでなく、食べる量にも注意が必要です。
一般的には標準体重を維持できる程度のカロリー摂取が推奨されますが、必要なカロリーは仕事や運動量によっても異なります。
また、早食いやドカ食いは食後血糖値の急上昇につながるため、ゆっくりよく噛んで食べることも大切です。
さらに、野菜や海藻、豆類などに含まれる食物繊維は、食後の血糖上昇を緩やかにする効果が期待できます。
とにかく中性脂肪と悪玉コレステロールを下げる
中性脂肪が高い場合は、特に糖質やアルコールの摂り過ぎに注意が必要です。
魚に多く含まれるEPAやDHAなどの良質な脂質を積極的に取り入れることも勧められています。
一方で、悪玉コレステロールが高い場合は、生活習慣だけでなく体質の要因が関与していることも少なくありません。
「痩せているのに悪玉コレステロールが高い」という方も実際によくいらっしゃいます。
ただし、体質によるものであっても過剰な悪玉コレステロールは動脈硬化を進行させます。
そのため、原因だけでなくコレステロール値そのものにも注意し、リスクに応じて適切な値まで下げることが大切です。
うまく付き合うことが、生活習慣病治療の本質
生活習慣病の治療は、「数字を下げること」そのものがゴールではなく、一朝一夕で改善する病気でもありません。
しかし、毎日の積み重ねが将来の心筋梗塞や脳卒中の予防につながり、健康寿命を延ばすことになります。
症状がないうちから治療を始めるのは面倒に感じるかもしれませんが、何か起きてからでは遅すぎるという先人たちの知恵の賜物と言えます。
私自身、大学病院勤務時代には、生活習慣病が原因となって脳卒中や心筋梗塞を発症した患者さんを数多く診てきました。
中には、リスクを指摘されながらも受診や治療が途絶えてしまった方もいらっしゃり、
「もっと早く受診していれば」「もっと早く治療を始めていれば」と、やりきれない気持ちになったことも少なくありませんでした。
東洋医学には「未病」という考え方があります。これは、まだ病気ではないものの、健康とも言い切れない状態を指します。
高血圧、糖尿病、脂質異常症は、まさに未病の段階から対策することで、将来の脳卒中や心筋梗塞を予防できる病気であることを重ねてお伝えしたいです。
健康診断の結果を見て、「このまま様子を見てよいのだろうか?」と迷ったときは、お気軽にご相談ください。

上井 康寛(かみい やすひろ) 逆井記念医院 院長
【資格】
- 医学博士(東京慈恵会医科大学)
- 日本内科学会 総合内科専門医
- 日本呼吸器学会 呼吸器専門医
- 日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医
- 日本感染症学会 感染症専門医
東京慈恵会医科大学を卒業後、呼吸器内科に入局。慈恵医大附属病院や国立病院機構東京病院などで長年研鑽を積んで参りました。
当院では、呼吸器、アレルギー、感染症をはじめとする幅広い内科疾患に対して専門的知見に基づいた診療を行っています。
このブログでは、診察室では時間が限られているためお話ししきれない病気や治療の大切なポイントを、できるだけ分かりやすくお伝えして参ります。